RESEARCHER’S EYE

リサーチャーズ アイ

芦生研究林で鳥へのシカの影響を探る

モニタリングサイト1000 陸生鳥類調査事務局
バードリサーチ 植田睦之

(図1)全国的に減少傾向にあるコルリとウグイス

私たちはモニタリングサイト1000事業の一環として,芦生研究林の繁殖期の鳥類の生息状況をモニタリングしています。モニタリングサイト1000は環境省が行なっているプロジェクトで,日本を代表とする生態系を長期継続してモニタリングすることにより、生態系の異変などをいち早く捉え適切な保全施策につなげていくことを目的とした事業です。

様々な生態系のモニタリングを行なっていますが,芦生研究林は,森林生態系のモニタリングサイトの1つになっています。現在,森林生態系のモニタリングで最も注目されていることの1つがシカの増加がもたらす森林生態系の変化です。シカが多い調査地では,その摂食により,スズタケなどの藪が減ってしまい,その結果,ウグイス,コルリといった藪を利用する鳥たちもまた減少しています(植田ほか2014)。

芦生研究林はこうしたシカの影響が最も早く生じ,また影響の大きい場所です。減少しているとはいえ,日本の森林の最優占種の1つであるウグイスは,ほとんどの森林の調査地で記録されています。そのウグイスが芦生研究林では調査を開始した2009年以降,本調査では1回も記録されていないのです。また,環境的にも地理的にも普通なら生息しているはずのコルリもまた記録されていません。

全国で,こうしたシカの影響が顕著になっている反面,一部の調査地では,バイケイソウやアセビなどシカが嫌う植物が代わりに藪をつくるなどの変化もおこりつつあります。こうした代替の藪ができることでウグイスやコルリといった鳥たちは復活するのでしょうか? それともそうした植物の藪は生息環境としては適さず,復活できないのでしょうか? また鳥種により反応に違いがあるのでしょうか? 今後継続してモニタリングをしていくことで明らかにしていきたいと考えています。

2017年1月6日